そもそものそもそも

いつまで続けられるだろうねえ

一瞬を切り取り、永遠を広げ、狭間だけが残り

今回は前回に引き続き「書くことはないがとりあえず書くシリーズ」の一つです。それではどうぞ。

 こうして文字を打ち並べること。言葉が意味を成し、無意味と共に連なること。自らの詩性に耳を傾けること、論理を一つの書として体現すること。全て言い方を変えた一つの概念。修辞法に人生を費やし、文法に己を奉ずる。ただただ、打ち放たれる文字群。内へ、放たれる放言。不完全な唇で言語性を探し回り、無空。
 「書く」とは、なんだったろうか。どんな感情が伴う遊びであったか。あらゆる余暇を打ち捨て、文が章立つ。語句の意義、蓋然性、計測するに値する価値の定義。空漠のページに一滴。無に積み重なる理論粒。賽の河原にて一人、巨城と接続。そうやって孤独を深めるのだろうか? あるいは、永遠と深い仲になるのだろうか? 考えた上で考えず、突き詰めたうえで帯を解く。この意味内容はあなたか、あなたの欠片か、ただの文字群か。流れる音、揺蕩う水素、暑さ寒さ、事柄へと消え虚しさを知る。全てを愛せる貧しさと、拒絶して成り立つ豊かさとを。いつ終わり、いつ始まったかすら終ぞ忘れる事件ファイル。目線が重なり、情報を詰め込み、誰もが全てを忘れる。戻ることは出来ても、進むことはできず、現在の最奥で古傷に震え。
 そうだ、失うことが出来ただろうか? 自由にかじかむことは出来ただろうか? 出来れば、戻ることが出来ないか? 手に入れた黄金は幻想、錆びた真実は過去の中。今を嘆き、虹色の時代を思い描き、灰色にくすんでいく。闇夜にも行けず、がらくたは捨てられず、ただ望まぬものばかり手に入れる。失うことは出来ない…… そうして、高みから希望を見下ろす。手遅れな目線を高らかに向けて。生き方によって賞罰がつけられ、何もできず朽ちてゆく。否応なしに、分別なしに、焦げカスへと近づく。何をやっても遅すぎたのだ。
 ここにあるのは車椅子。踊るだけの意志をなくし、揺りかごで忘れられる。なにもかも思い出せる。なにもかもを輝かせる。しかしここにあるのは車椅子。足をなくした代用品。それこそが与えられるものの全容だ。安らぎを見せる薬。かつての景色そのもののハリボテ。ひもじく貪り食う。食っても食ってもひもじい。だから眠る。踊ることが出来ないから、車椅子に身を預け、青空を願う。
 空無の中で夢を見る。でも、僕は肯定できる。悲嘆の氾濫を、優しく抱き留められる。だから書かないと。希望は綴ることでしか表現できず、我々は言葉しか喋れない。それこそが永遠で、満ち足りた世界を駆け巡る安らかな眠りだ。意味が全てを変えてくれる。風はどうあれ、風向きは好き勝手にできる。速く走ることは難しいが、今すぐにでも走ってやる。信じられないほど無力だが、ためらいはしない。体は駆動し、現実を感じる。脳が作動し、物語が始まる。心はここにある。誰にも近づけない祈りを以て、頬が触れるほど近くに。